実録会話 (1964年3月13日 金曜日 教室にて)
俺 石井さん。
彼女 なーに?
俺 実は卒業式の後に二人だけで話があるんだけどいいかな?
彼女 いいわよ、話って何なの?
俺 とても大切な事だ。
彼女 今、言えないの?
俺 そうなんだ。
彼女 今、知りたいな。
俺 どうしても当日に話がしたいんだ。
彼女 どうしてその日でなくてはいけないの?
俺 その日が特別な記念日になる可能性があるからさ。
彼女 特別って何の事なの?
俺 それはその日に分かるよ。
彼女 要するに今は言いたく無いのね。
俺 そうなんだ。だからそうゆう事でいいかな?
彼女 いいわよ、その日にその話を聞く事を約束するわ。
俺 ありがとう、楽しみにしているよ。
1964年3月18日 水曜日 卒業式直後
B.G.M.(悲惨な戦争=CRUEL WAR)が流れる中で
俺 先日の約束の件で今二人だけで話をしたいんだけどいいかな?
彼女 いいわよ、どんな話しなの?私も気になっていたのよ。
俺 実は俺、近い中に君に手紙を出してもいいかな?
彼女 ごめんなさい、私これでもいろいろと忙しいし、筆不精で手紙は苦手なの。
俺 そうか、OKしてくれたら俺は飛び上がって大喜びし《高校入試に合格した時より遥かに嬉
しいよ》と言う台詞を用意していたのに。しかし《ノー》と言う返事なのでそれを本当に言
え無くてとても残念だ。俺の描いたシナリオが崩れたよ。それはともかくとして君にどうし
てもリクエストしたい事があるんだ。
彼女 何かしら?
俺 将来いつか俺達結婚しようよ。
彼女 えっ!今何て言ったの?もう一度言って?
俺 俺と結婚してくれって言ったんだ。
彼女 いきなりどうゆう事なの?私をからかっているの?
俺 こんな大事な事で嘘や冗談は言え無い。
彼女 本気なの?
俺 当たり前だ。
彼女 それなら私も真面目に答えるわ。
俺 勿論OKでしょ?
彼女 止めてよ!
俺 どうして?
彼女 何故私があなたと結婚しなければいけないの?
俺 俺たち二人が幸せになる為だ。
彼女 私は他の人と幸せになるわ。
俺 俺じゃなきゃ駄目だよ!
彼女 私にだって選ぶ権利があるわよ。
俺 じゃあ俺にするんだ。
彼女 いやよ!
俺 そこを何とかしてくれ。
彼女 駄目なものは駄目、イヤなものはイヤよ。
俺 そんな理屈は通らないぜ。
彼女 ノーと言ったらノーよ。
俺 じゃあ俺の立場はどうなるんだ?
彼女 自分で考えてよ、私はそこ迄責任を持てないわ。
俺 随分冷たい事を言うね。
彼女 どう?これで私の事を諦める気になったかしら?
俺 そんな言葉で気持ちが萎える位なら端からプロポーズなんてしないよ。
彼女 お願いだから堪忍して!
俺 駄目だ。
彼女 全くあなたって人は熱心過ぎるのか、しつこさそのものと言うのか、あきれ果てたわ。
俺 じゃあこれでギブ・アップか?
彼女 とんでもないわよ。
俺 君も諦めが悪いね。
彼女 もういい加減にしてよ。
俺 結婚は人生で一番大事な事なんだよ、いい加減に出来る訳無いだろ。それとも俺の言ってい
る事は間違っているか?
彼女 あなたの言っているその一般論は正解よ。でも問題の本質を摩り替えて私に結婚を迫っても
駄目よ!
俺 何故素直になれないの?
彼女 私は自分の気持ちを正直に表現しているわ。
俺 俺のプロポーズを断るんだから、俺の事がそんなに嫌か?
彼女 あなたは優しくていい人よ。
俺 じゃあ拒否する理由は?
彼女 私はこれから高校に入って勉強もスポーツもしたいし、将来に向けてそれなりの夢や希望が
あるの。だから今から特定の人とそんな大事な約束は出来ないわ。
俺 俺は君を拘束も束縛も干渉も一切しないと約束するよ。君に今ここで嫌だと言って断られて
も子供の使いじゃあるまいし引き下がる気はないね。俺は真剣だ。
彼女 あなたの気持ちは大変嬉しいけどいきなりそんな事を言われても困るわ。それに今そんな気
は全然ないわ。
俺 じゃあその気になる迄永遠に待っているよ。
彼女 でも待つだけ無駄なんだから絶対に期待しないでね。期待外れになるわよ。間違いないわ。
俺 我々二人が一緒になれば絶対幸せになれるのに。本当に俺が保証するし約束するよ。
彼女 いやよ。お願いだから勘弁して。本当に駄目よ。
俺 全く聞き分けの無い困ったお嬢様だね。俺、約束は必ず守るし、言った事は間違い無く実行
する人間だ。試してみるだけの価値は十分にあるよ。
彼女 私はあなたとは何の約束もしないし、あなたが何を言おうと実行しようとそれはあなたの自
由だけど私には何の関係も無いし、責任も無いわよ。それに私は人を試すなんていやよ。
俺 君を困らせたり、迷惑を掛けたりしない事を約束し保証するよ。
彼女 そんな約束も保証も私には不要よ。あなたの私に対する気持ちはかなりオーバーヒートして
いるみたいだけど、私の事なんてどうでもいいじゃない。お願いだからもう止めて!
俺 ネバーギブアップだ。例え片思いでも人を好きになるってどうゆう事かよーく分かったん
だ。素晴らしい事ではあるけど、辛い事でもあるんだ。俺はもうこれ以上それに一人で耐え
られる自信が無い。しかも今日解散したらもう永遠に逢えない。だから君にこうしてアプロ
ーチしたんだ。清水の舞台から飛び降りるつもりで決死の覚悟なんだ。
彼女 (笑)ずいぶんオーバーね。特攻隊じゃあるまいし。でもあなたのリクエストに応えられな
くてごめんなさい。
俺 このまま別れたら本当にもう二度と逢えないぜ。
彼女 それでいいのよ。人間会うが別れの始まりって言うじゃない。
俺 それで再会出来ないとしたら君の責任だ。しかし本当に逢えなくなるのは俺が死んだ後だ。
でもまだ死にたくないよ。
彼女 私が仮にその約束をしても私の方からそれをキャンセルしたらあなたは間違い無く傷付く
わ。そんな事に私は耐えられないの。
俺 そうゆう約束は仮にするものでは無いし、キャンセルを前提にするものでも無い。それに俺
は夢と憧れのどうしても入りたかった希望高校の受験に失敗し大きく傷付き、とても深い失
望感と絶望感を味わった。だからこれ以上の大きなダメージなんて有り得ないから君の考え
るそんな心配事は無用だ。
彼女 駄目よ。あなたは人一倍優しくてデリケートな人なんだから見ていられないわ。だから私は
今この場でハッキリと断っているのよ。
俺 こうゆう問題って結局残された者だけが味わう大きな悲劇なんだよね。どんなに泣き叫ん
でも、あるいは最善の努力をしても自分の思い通りにならないなんてとても辛いだろうね。
でも誰も助けてくれないし相談も出来ない。後は自分で解決しなければならない自分自身の
心の問題だ。そして去って行く者だけが美しいんだ。
彼女 本当にごめんなさい、さよならするわ。私、友達と約束があるの。
俺 行くな!まだ話は終わってない!俺に死ねと言うのか?
彼女 そんな事言ってないわ!私より素敵な女性は沢山居るわ。そうゆう人を見付けて幸せにな
って!
俺 いやだ!君しか居無い。君しか考えられないんだ。俺は君の為ならどんな事でもするし、何
でも出来る気がする。君さえ居れば他は何もいらない。死だって怖く無い。だから何とか考
え直して欲しい。
彼女 御期待に添えなくて本当にごめんなさい。
俺 《ごめんなさい》なんて言葉は聞き飽きたからもういい。それよりこんなに頼んでいるのに
絶対に駄目なの?
彼女 友達と言う事でどうかしら?それで納得してもらえれば嬉しいわ。
俺 俺は君にガールフレンドになってくれと頼んでいるんじゃない。将来の約束を求めている
んだ。
彼女 それは難しいわ。あなたこそ困ったお坊っちゃまネ。
俺 断る本当の理由は何なの?俺の背が低いから?成績が悪いから?それとも性格に問題がある
から?
彼女 全部外れよ。そんな事全く関係無いわ。理由は先程私が言った通りよ。それを信じて欲し
いわ。
俺 考え直すのなら今が最後のチャンスだ。我々の人生に於ける決定的な別れ道だ。
彼女 そんなオーバーよ。あなたには《ごめんなさい》と言うより他に無いわ。私はあなたに何
回《ごめんなさい》と言えばいいのかしら?
俺 分かった、俺は最高の幸福を求めて今君と究極の死闘を演じた。しかし君は俺のリクエスト
を拒否した為俺は敗北した。だが君には感謝している。俺の話を最後迄聞いてくれた事に。
ありがとう。そして俺の為に君の大切な時間を割いてしまって悪かった。ごめんなさい。
彼女 (涙)…
俺 これで話は終わりだ。もう行っていいよ。友達が待っているんでしょ?
彼女 それがあなたの優しさよ、とても素敵な魅力よ。
俺 どっちがより幸福になれるか競争しようか?
彼女 そうね、いいわよ。
俺 テレビ・ドラマのストーリーなら君の今の言葉でズィ・エンドとした方が格好良くて都合が
いいだろう。しかし現実の今の俺の心の中はとても辛い悲壮感でいっぱいだ。本当に辛い
よ。辛過ぎる。《男なら最後は格好良く決めたら》と言われるかも知れないけど、それに対
し俺はこう答える。《俺は正直に本音を言っている、体裁なんか糞喰らえ!》と。俺が一人
で勝手につまらない事を言ったりしてごめんなさい。
彼女 いいのよ。言いたい事があれば全部吐き出して。その方がすっきりするし、私も嬉しいわ。
俺 随分優しい事を言ってくれるじゃないか。でももう気が済んだよ。だからもう本当にその友
達の処へ行っていいよ。君の姿が見えなくなる迄ここで見送っているよ。
彼女 他に大勢女の子が居るのに何故私なの?
俺 俺にとって君が一番素敵な女性だから他には考えられないんだ。
彼女 (涙)ではお別れね、いつ迄もお元気で、サヨナラ!
俺 今日の事は一生忘れないよ、さよなら!と俺が言ってこの場を解散すれば綺麗事で終わる。
しかしそんなのは俺の本心じゃ無い。後々悔いを残さない為にもう一度最後の質問をする。
どうしてもノーか?
彼女 私の事をそこ迄思って居てくれて凄く嬉しいわ。でも私は私の道を行くわ。あなたと私は所
詮結ばれない運命なのよ。あなたにそう理解してもらえれば本当に嬉しいわ。
俺 俺は間違っても君にサヨナラなんて絶対に言わないぞ!
彼女 (涙)私からあなたに本当に最後の言葉を言わせてもらうわ。ごめんなさい!サヨナラ!
その時流れていたB.G.M.は《風に吹かれて=BLOWIN’IN THE
WIND》であった。こうして話し合いは物別れに終わり彼女は俺から去って行った。俺はただ呆然と指を加えて見送るより他に為す術が無かった。夢と憧れの高校受験に失敗した時よりも更に大きな失望感と絶望感だけが俺の心の中に広がっ
て残った。彼女がOKしてくれれば高校受験の敗北による大きな痛手を完全に払拭し、更にそれを遥かに凌駕する大逆転勝利となり奇跡の優勝となる筈であった。しかし俺の中学15の春は《受験失敗と失恋》と言う散々な目にあって終わったのである。しかしその後時間の経過と共にそのショックも和らぎ、さっぱりとした気持ちで次の時代に入って行ったのである。
そして中学卒業後45年もの歳月が経過して初めてのクラス会が開かれたのである。
想定会話 (2011年3月20日 日曜日 還暦同窓会)
俺 おっす!
彼女 ?
俺 うーすっ!
彼女 どなたですか?
俺 俺だよ、俺、俺!
彼女 俺俺詐欺なの?
俺 やだな、そんな陳腐で古典的表現は。
彼女 だって分からないんですもの。
俺 じゃあ俺の顔をよーく見るんだ。
彼女 あっ!やっと思い出したわ。
俺 では正解は?
彼女 ○○さんでしょ?
俺 ピンポーン!正解!よく分かったね。嬉しいよ。
彼女 最初から分かっていたわよ。あの最後の場面では私の方から強引に《さよなら》してしまっ
てごめんなさい。それ迄は殆ど話しをしなかったのにね。
俺 あの時の会話を覚えてる?
彼女 勿論よ。絶対に忘れない強烈な思い出よ。あそこでプロポーズされるなんて本当に吃驚し
たわ。
俺 あの時君は俺のプロポーズを拒否して夢や希望があると言って強引に俺の前から去って行っ
てしまった。残された俺は心の痛み、悩み、苦しみで大変辛かったよ。でもこれは俺の勝手
な心情であって君には何の関係も責任も無い事だった。そもそも最初に俺が手紙の件を持ち
出したのは次のステップの話がスムースに行くか否かのテストだった。そのテストに失敗し
てかなり困難な状況になったけど、俺は強引に押しの一手でプロポーズした。しかし君は逃
げ切ってしまった。今となっては遠い昔の思い出話しにしか過ぎないけど、まあ俺の人生な
んてこんなもんさ。それに引き換え君は相変わらずハッピーでリッチな女性という感じだ
ね。ところで君があの時言っていた夢と希望は実現したの?
彼女 人生色々あってね、思惑通り事が運ばなかったわ。
俺 でも今は健康で裕福な感じがするよ。
彼女 家庭的にも経済的にも全く問題は無いし、そうゆう意味では恵まれているわ。
俺 だったら幸せそのものじゃないか。
彼女 世間的にはそうだし、私もそう思っているわ。でも心のどこかに隙間がある様な気がする
の。それはあの遠い昔のあなたからのラブ・コールを断ったせいなのか、そうじゃ無いのか
何となくすっきりしないのよ。
俺 でもそれって贅沢な悩みと言う物だ。俺は下層階級の貧乏労働者なので毎日が食うや食わず
の生活なのだ。心の持ち方迄考える余裕なんて全然無いよ。毎日、仕事や時間に追われてい
るんだ。
彼女 あなた昔とは変わったわね。
俺 どうゆう風に?
彼女 昔のあなたはあの教室ではおとなし系だったのに、今はかなり饒舌だからよ。
俺 いつ迄も同じじゃ困るよ。第一それでは仕事にならないし、人間関係をスムースに上手く進
めて行くにはそれなりのパフォーマンスも必要さ。それでも相手の性格によってはそれなり
の対応も必要さ。俺の言っている事は間違っているかな?
彼女 いいえ、正解よ。まあ人生色々ね。ところであの卒業式の後の事だけどあの時は本当にごめ
んなさい。命だけは助けてと泣き叫んでいる幼児を見殺しにするみたいで私も本当は凄く辛
かったのよ。後ろ髪を引かれる思いと言うのかしら。あの時あなたの気迫に押されてもう少
しで私が負けていたかも知れないわ。本当に危なかったんだから。
俺 俺は危険な人間でも、要注意人物でも無かったよ。じゃあもっと強引に攻めればよかった
んだ。でも今更そんな事を言ってもね。しかし今日は運命の出会いの日なのさ。これから
素敵な事があるかもしれないぜ。
彼女 処で昔あの教室で私とよく視線が合ったけど、いつもあなたは慌てて目を逸らせていたけど
何故?
俺 何と無くだ。正直に言えば恥ずかしかったんだろう。当時の俺の心理的な状況を正直に言え
ば無意識の中で君を意識していた可能性があった。要するに好きだったんだろう。おバカな
少年の淡い初恋だったのかも知れない。それが意識として自覚したのが卒業直前であり、そ
の為に絶体絶命の最後の日のプロポーズとなったんだ。
彼女 今、目が合ったらどうする?
俺 ニヤッと笑って手を振るか、ウィンクをするか、敬礼をするよ。でも今そんな事をしたら本
当におバカな人と思われちゃうかな?どう?試しにやってみる?結局大昔の教室と同じで俺
の方から急に視線を逸らせたりしてね。俺って照れ屋と言うか恥ずかしがり屋なんだ。本当
だよ。
彼女 あなたは物静かな人と思っていたけど面白いし、よく喋るし、昔の教室でのイメージとは大
きな隔たりがあるわ。
俺 俺との付き合いのあった人は皆同じ事を言っているよ。俺という人間を理解するには俺と付
き合わなければ分からないよ。人間は誰しも性格的には二面性がある。要するに表もあれば
裏もあるんだ。つまりジキル博士とハイド氏さ。俺はもっとオーバーな多重人格者だけど
ね。だからその人の一部だけを取り上げてその人全体を評価してはいけないのだ。多角的な
面から総合的な判断をすべきだ。今、君から《物静か》と言われた。そうゆう部分があった
のは事実だがそれは多角的な性格の中のほんの一部分でしかない。しかし俺も大学卒業後デ
パートに就職したけど黙っていると仕事にならないので、客や周囲に調子を合わせて上手く
やって来たんだ。
彼女 処であなたのホームページを見たけど中学での成績は随分可愛い数字が並んでいたのね。そ
の中で不思議に思ったのは中学1年当時英語の成績が最低の1だったのに、大学生になって
教育実習とは言え高校で英語を教えた事よ。
俺 英語は中3でやっと成績が人並みの3になったのに高校入学直後に赤点となり、屈辱的な居
残り補習組となった。でもその後高校生なのに英語をABCからやり直した結果、高2の2
学期の英語の成績はクラスで1番になり、大学では主席で卒業した奴より英語の成績だけは
俺の方が勝っていた。それ程英語を勉強して好きになった。そんな俺でも教育実習に行った
高校のレベルが低過ぎた為に俺でも務まったのだ。でも大学卒業後は英語に接するチャンス
が無くて今では中1以前のレベルでしかないんだよ。処でこのクラス会を二人だけでそっと
抜け出してデートしようよ。
彼女 駄目だよー。
俺 どうして?
彼女 だって私には旦那が居るんだよー。
俺 そんなー、オーバーに考え過ぎだよー。俺にだって配偶者が居るんだぞー。
彼女 私、そんなに軽い女じゃないよー。第一お互いの立場を考えたら不味いよー。
俺 旦那にはこう言えばいいんだ。《最初で最後のクラス会になるかも知れないので大いに盛り
上がちゃったの、ごめんなさい》と。誰にも迷惑を掛ける訳じゃないんだからいいんじゃな
いの?
彼女 バレたらヤバイし怖いしみっともないからやっぱりやだよー。
俺 子供のままごとじゃああるまいし、男と女の付き合いサ。喋らなきゃあ情報の漏洩は考えら
れないよー。要するに黙っていればいんだよ。そうすれば誰にもバレないよ。
彼女 私には孫が居るんだよー。
俺 俺だっておじいちゃんなんだぞー。
彼女 (笑)お孫さん可愛いでしょ?
俺 そんな誤魔化しは俺には通用しないぞー。それに今はそんな事全然関係無いんだぞー。
彼女 私をそんなに困らせないで。参っちゃったなー。
俺 間違っても君に迷惑を掛けないと約束するよ。俺は言った事は実行するし約束は守る人間だ
と昔言ったよね?
彼女 でも・・・・・
俺 どうしても信用して欲しい。そして二人だけのアバンチュールを遠慮しないで積極的に楽し
もうよー。
彼女 そこ迄言うのなら・・・減るもんじゃ無し、損する訳でも無いんだから、そして愉しむんだ
から、まあいっか?
俺 その《まあいっか》の言葉は中学卒業の日に言ってほしかったな。それはともかく、じゃあ
これで契約成立、後は実行だけだ。
彼女 (笑)うん、でもちょっとだけよ。
俺 (笑)うん、ちょっとだけでもいいとも。じゃあ行こうぜ。
彼女 (笑)どうせやるなら思いっ切り愉しもうよ。
俺 (笑)それもそうだな、マナーもタブーもエチケトも無い特別な世界に行くんだからね。
彼女 (笑)で、その世界はどんな所で何をするの?
俺 (笑)とぼけないでくれよ。昔俺は《H》組だけは嫌だったのに運悪くそうなってしまっ
た。だから今その通りの事を実行しに行くんだよ。
彼女 (大笑)アハハハ!あなたって本当におバカで面白い人ね。じゃあ本当に行く?
俺 (笑)当たり前じゃん、今約束したばっかりじゃん。
彼女 (笑)面白そうね、楽しみだわ。期待しているわよ。
俺 (笑)案外期待外れだったりしてね。
彼女 (笑)そんな事許さないわよ。万一そうなったら罰ゲームとして鞭打ちの刑に処するわよ、
そして調教して思いっ切り仕込んであげるわ。私は本気よ、いいわね!
俺 (笑)おー怖い!よーし、やったるでー!
彼女 (笑)じゃあせいぜい頑張る事ね!
俺 (笑)君も頑張るのだ。
彼女 (笑)はい、はい。
俺 (笑)はい、は一度でいいのだ。
彼女 (笑)はーい。
俺 (笑)短く言うのだ。
彼女 (笑)へい。
俺 (笑)それでは間違いなのだ。
彼女 (笑)はい!
俺 (笑)それでいいのだ。
彼女 (笑)何で今バカボンみたいな会話をするの?
俺 (笑)おバカなカップルだからなのだ。
彼女 (笑)納得、納得。
俺 冗談はいい加減にして本当に行こうよ。
彼女 でもまさか私達が一緒に消えたらちょっと不味いわね。
俺 とりあえず今この場は解散して、2時間後の17時にこのホテル52階のニューヨーク・
グリルで待っているからね。
彼女 その後はどうするの?
俺 このホテルの部屋をリザーブしてある。
彼女 随分手回しがいいのね。
俺 V.I.P.を相手にするのだから当然だ。
彼女 流石ね。ではそうゆう事で宜しく!
俺 はい、お待ちしております、女王様。
THE END
この物語を終了するに当たり最後に流れていたラスト・ミュージックとしてのB.G.M.は
《ホイッティングトン寺院の鐘》であった。